週刊文春ミステリーベスト10(2007年) vs このミステリーがすごい!2008年版

ここ数年『このミス』(宝島社)との差があまり明確でないと噂の『文ミス』(文藝春秋)ですが、今年のベスト10の結果が発表されています*3
これまでに『このミス2008』と『ミステリーが読みたい!2008年版』(早川書房) *4比較、『このミス2008』と『本格ミステリ・ベスト10 2008年版』(原書房) *5比較をしてみましたが、今日は、『このミス2008』と『文ミス2007』とを比較してみたいと思います。
『文ミス』のベスト10作は全部『このミス』の上位作になっているので、ひとまず以下の指標で見てみました。

文春度 = 文ミス得点 / このミス得点

読者層からすると、文春度が高ければ高いほどオヤジ度が高い、と予想されますが――果たして結果はこうなりました。棒グラフ(数値)は文春度の偏差値です。

順位文 春 度作 家備 考
1 1.9494(72)宮部みゆき 楽園
2 1.6000(65)吉田修一 悪人
3 1.0282(53)米澤穂信 インシテミル
4 1.0185(53)柄刀一 密室キングダム
5 0.9157(51)有栖川有栖 女王国の城
6 0.8942(50)近藤史恵 サクリファイス
7 0.6504(45)三津田信三 首無の如き祟るもの
8 0.6111(45)佐々木譲 警官の血
9 0.5978(44)桜庭一樹 赤朽葉家の伝説
10 0.4597(42)今野敏 果断
文春度で一位(1.94)は、超能力系ルポ推理の『楽園』(宮部みゆき/文藝春秋) *6 *7。なるほどいかにもな印象の、堂々の一位です。

悪人果断―隠蔽捜査〈2〉楽園 下 楽園 上

一方最下位(0.46)は、左遷キャリア奮闘の『果断』(今野敏/新潮社) *8。硬直化した組織の中の、なんてのはいかにも好まれそうなんですが、バリバリエリート竜崎の姿がオヤジ心をくすぐらなかったということでしょうか。
両作とも、2字熟語の題名で、しかもシリーズ2作目、という共通点があるんですが、文春度という指標で明暗を分けたの理由は、前作からの出版期間の差、読者を何年待たせたか、にあるのかもしれません。
文春度2位(1.60)の『悪人』(吉田修一/朝日新聞社) *9も漢字2文字。題名の短かさ・覚えやすさも一つのポイントのようですね。『楽園』に差をつけられた背景には、『文ミス2008』の主催が文藝春秋であることも微妙に効いているかも。
結論ですが、オヤジはこんなところでも、日頃見慣れた「文春 vs 朝日」の対決が好き、ということでいいのかな?
このミステリーがすごい! vs ミステリーが読みたい!2008年版 本格ミステリ・ベスト10 vs このミステリーがすごい!2008年版

><