そらいろな

著:一色銀河 画:古夏からす 電撃文庫*1

憧れの国友監督率いる高校に肘の故障で行けなかった元剛腕投手の祐樹は、唯一誘ってくれた元女子校に入学するが、新設野球部の監督を務めるのは――技術が感情をドライブする、今どきのすぽ根ドラマ。
デビュー作『若草野球部狂想曲』*2から十年、あの頃は弱かった阪神もすっかり強くなり、時の流れを感じる今日この頃ですが、野球バカの作風にはさらに磨きがかかっている模様。
蘊蓄やガジェットを羅列することでペダントリーを指向する手法は、読者を眩惑するという意味でミスリードするには有効なんですが、不用意に使うと物語の展開そのものに対する注目も逸らしてしまう、という危険性があります。ところが本作の野球蘊蓄は、物語を駆動する役割をしっかり果たしています。技術がキャラクターの感情を動かす、技術論が根性論を凌駕する筋立は超好み。野球だって料理だって、愛情じゃなくてまずは技術ですよね。
シビアなマネージャーの恋、彼女の生活の世話をする天音、女好きだけど軽薄じゃないキャッチャー亮介を含め、個性豊かな面々の語り口も楽しい。
選手の技術もさることながら、監督の技倆がモノをいう高校野球という舞台での、天音の指揮の行く末が楽しみでなりません。甲子園に行くまで、少なくとも地区予選の決勝戦まできちんと続刊が出ることを願いつつの、お薦め。

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