つくもがみ貸します

著:畠中恵 画:三木謙次 角川書店*1

深川で雑貨レンタル店「出雲屋」を営む義理の姉弟 お紅と青次が貸し出す品は、どれもこれも、由緒正しき百年モノの古道具――壁に耳あり大江戸ミステリー。
お紅と青次が黙っていると、貸し出し先で見聞きしたことを喋り出す古道具の付喪神たち。彼らのやっていることは、RFIDタグで移動履歴や購買履歴を追跡なんてのと似たようなことで、ある種プライバシーの侵害のはずなんですが、仕入れてくる情報が、女中や小間使い、社員や丁稚の噂話レベルなせいか、どうせいつかは外に漏れること、という感じであんまり罪がありません。
主人と下僕の間で会話が成立する場合、『ドラゴンキラーいっぱいあります』(海原育人) *2のように、主導権がいつの間にやら逆転しているところが見物の一つなんですが、本作の場合、お紅や青次と付喪神との間には、原則として会話は成立しません。自分に利するように相手を動かすゲームをやり続けているような感覚は、ちょっと新鮮でした。
お紅が探し求める蘇芳の君の行方が青次の心を惑わせ、と、三角関係匂わせつつ進む連作なんですが、勝手にロマンス(?)を思い描く男と、地に足をつけて物を考える女の差が面白い。絶妙のタイミングで飛び出すライトDV、お紅の闘魂ビンタもお薦め。

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