セキララ!!

著:花谷敏嗣 画:京極しん ファミ通文庫*1

脱オタしてできた彼女 桜との帰り道、かつて自分が書いた小説のヒロイン火琉奈のコスプレをした美少女が街角で俺を見つめて「瘴気の匂いがする」と同じ台詞を呟き――かりそめのリア充生活に崩壊の予感ラプソディ、第9回えんため大賞奨励賞受賞作。
ネット小説を公開したために痛い思いをしつつ、その小説のキャラが颯爽と登場、といえば、『カラミティナイト』(高瀬彼方) *2のイジイジ系眼鏡っ娘 智美を忘れるわけにはいかないのですが、本作は、立つ鳥後を濁しまくりで小説書きをやめてチャラ男に変身した《嫌な奴》が主人公。それでも、今の自分に納得できない彼の不完全燃焼ぶりは、やはり智美に通じるものがあります。
自作小説の記憶も記録もすべて破棄した彼が、過去を思い出したくない、記録も読みたくない、と、いつまでたっても、前に進めないところがいかにも駄目人間で、嫌な奴なんですけど、突き抜けているせいで、かえってそこに好感を感じたり。
過去の自分を整理して自分なりの道を進むパターンを予想していたので、「火琉奈の世話をしたために桜との仲が切れ、火琉奈とも前向きの別れ」かな、なんて思ってたんですが、単なるアテ馬に終わらなかった桜の大活躍は驚きの展開。
自作小説の甘さ若さ蒼さ加減にセルフ突込みのシーンは、妙に身につまされます。夜中に書いたファンレターやラブレターを朝冷静になってから読み返したときの体に火がついた思いを外側から追体験したい方にお薦め。

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