タルト・タタンの夢

田中康夫伊川一門を酷評してた
著:近藤史恵 画:谷山彩子・本山木犀 *1

下町の仏料理店パ・マルのシェフ三舟は、気取らない料理で客をもてなすだけでなく、謎を解き明かして客の心を解きほぐす――絶品料理が奏でる日常系ミステリ。
無精髭に後ろで束ねた長い髪、と、田舎で陶器でも焼いていそうな作務衣系の三舟。この見た目のこだわりは、フランス料理から逸脱せずにどこまでできるか、を念頭に置いたレシピの数々にも通じるものがあります。融通無碍に何でも出すビアバー香菜里屋のマスター/『螢坂』(北森鴻) *2とは好対照。
パ・マルという名前は、『東京いい店やれる店』(ホイチョイプロダクションズ) *3の三つ股レストランを思い出してしまうところが、個人的にはちょっと残念。
料理に込められたもてなしの意図がわからずに戸惑ったり、喧嘩したり、逆上したり、をシェフが見事に料理で謎解き、という話の構成は、『美味しんぼ』(雁屋哲/花咲アキラ) *4で喩えれば、岡星と山岡が一体となって料理屋を営み、大家が警官が無理難題をふっかける、といった感じでしょうか。
レシピの中では、大麦と帆立のスープ生姜風味が一番気になりました。麦を米にかえちゃえば、普通にある材料で作れるかも。

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