桃山ビート・トライブ

うなる三味線響く太鼓に震えるぞハート
著:天野純希 画:渡辺コージ 集英社*1

盗んだ三味線に心を奪われた藤次郎は、出雲のお国一座で冴えない毎日を過ごす笛吹き小平太、男に召されて逃げ出した能の舞手ちほ、黒人奴隷として信長に献上された過去を持つ太鼓叩き 弥介と、刻むは血液のビートの河原芸人反骨ストーリー。
秀吉政権末期、芸事に理解を示さない三成が河原芸人に弾圧を加える中で、音と踊りでバンドを組む4人。技倆が劣ると自認する一人がこのままでいいのかと悩み、他のバンドについふらふらと引き寄せられるものの、結局は元のサヤに納まる、というのが音楽モノの定石。
バンドのためにならない、と、玲との交際をマネージャーに禁じられ、街を彷徨い、ライバルのバンドに出会う葉子が、どう復帰するかをクライマックスの一つにする『愛の歌になりたい』(麻原いつみ) *2 *3同様、本作もその線を外していません。
信長の「家臣」でありながら本能寺の変を生き延びた弥介を、ドラマーに据え、アフリカ系の力強いリズム感を前面に出す、という設定が勝利の方程式の成立を強く感じさせます。踊って食べればそれだけで幸せな大食漢ダンサーちほを、メンバーが「女」として扱っていないところもまた良し。
学校や親に反発してゲリラ的に演奏するロックバンドの定番は好きだけど、ちょっと手垢がついてるような気もしない、なんて方は、時代を桃山にした本作で、新鮮な蒼さをもう一度感じられるかも。

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