とある飛空士への追憶

お料理は不得意よ。人にしてあげる機会がなくて。
とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

次期皇妃ファナを乗せて単機で敵中を突破する指令を受けた傭兵飛空士シャルルを支えるのは、白銀の髪の毛の少女の想い出と、アルディスタ正教への信仰――生きている限り複座式水上偵察機をいつまでも懐かしむでしょうストーリー。
ローマの休日*2や『レディ・アンを探して』(氷室冴子) *3と同じく、限られた日数の中での身分違いの恋が基調となっている本作ですが、大きく違うのは、ヒロインの正体を主人公が最初から知っていること。
そのせいもあって、浮世離れしたヒロインの言動の初々しさに主人公が振り回されるシーンが魅力の『ローマ〜』『レディ〜』とは、ヒロインが主人公を理解するまでの展開がかなり異なります。身分や立場をわきまえた言動を二人がどのように打破していくのか、が、本作の見処。
酔ったファナが願いをシャルルに告げたのを受けて、『イリヤの空、UFOの夏』(秋山瑞人) *4とは違った見せ方で、その願いがかなうラストは、圧巻です。お薦め。

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