完全恋愛

辻真先、牧薩次、磁気摩擦、牧自殺
著:牧薩次 画:網中いづる マガジンハウス*1

消える凶器(昭和20年)、テレポートするナイフ(昭和43年)、二箇所に同時出現する男(昭和62年)、存在を知られない罪が完全犯罪なら、存在を知られない恋は完全恋愛なのか――昭和に裏打ちされた本格ミステリ
本庄究の一生を柱にしているんですが、伯父 坂上の世代、究の世代、弟子 魅惑の世代の男三代記でもあり、女三代記の『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹) *2と同様の構成で昭和を描いていることになりそう。
もっとも、『赤朽葉〜』の昭和はどこか幻想的なのに対して、本作の昭和は、作者自身が体験しているだけに地に足が着いた感じ。『赤朽葉〜』のミステリ的謎は一つですが、本作では各世代ごとに謎が出てくるだけじゃなく、さらに「完全恋愛」の謎まで提示されて、そのサービス精神も嬉しいところ。
ラストで明かされる「完全恋愛」は、ある意味で究極のツンデレかも。いくつになっても女は女、なんですね。

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