死神姫の再婚―腹ぺこ道化と玩具の兵隊―

毒入りシチューで夫の体を鍛える妻
著:小野上明夜 画:岸田メル B's-LOG文庫*1

前夫が婚礼の日に暗殺され「死神姫」の異名を得た貧乏貴族の娘アリシアと剛腕の成り上がりカシュヴァーンの新婚生活に飛び込んできた前夫の後を継いだ当主エリクスは、奇妙な願いを告げ――ホラーマニアの眼鏡っ娘コメディ。
カシュヴァーンの命を狙っていながら寝返って、今では手下となっている暗殺者ルアークの過去が語られる今巻。できる弟ルアークに当たり散らすできない兄サイードの二人の関係は、いわばDVの共依存なんですが、暗殺術に優れるルアークが体を傷付けられるわけもなく、DVは専ら言葉の暴力。
レジンキャストミルク』(藤原祐) *2の きみちゃんも、自慢の兄にDVを受けてはいるんですが、自分の方が優れている、と自覚している点で、ルアークの方が依存の度合が高いかも。
とそんなシリアスなストーリーを一服させてくれるのが、天然なアリシアの振舞い。彼女なりに行動の論理は一本筋が通っているんですが、周りの者の常識とのずれが、重苦しい空気を吹き飛ばしてくれます。
カシュヴァーンの愛人を狙いつつも果たせず、の、メイド ノーラに加えて、彼ら夫婦の新婚生活を探る少女傭兵レネも登場し、アリシアとの三人のピントのずれたかけあいが楽しい一冊です。

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