暗闇のヒミコと

范増の進言をうとましく思う項羽の末路
著:朔立木 光文社*1

高級老人ホームで起きた生爪剥し事件と殺人事件の犯人と疑われ、冤罪を主張してマスコミの寵児となった絵里。彼女を昔から知る私は――ワイドショー型犯罪者偶像化サスペンス。
作者は刑事事件を担当してきた弁護士とのこと。保釈された被告に有罪判決が告げられるかどうかを事前に知る方法など、ちょっとした知識を挟み込むことで、迫力が増しています。
一審で弁護を担当した黒木弁護士と検察側との、「隠し玉」をめぐる言葉にならない攻防では、ここがポイント!と作者からのメッセージが書き込まれています。この記述、『逆転裁判*2におけるアイテム収拾同様、トリックを強く示唆してはいるんですが、読む側が現実の刑事事件の展開に詳しくないこともあって、クライマックスでは、我慢し続けてきたものが一気に解決する快感を味わえました。
容疑者側と警察側とを行き来する新聞記者の主人公の蝙蝠的な振舞いにも味があるお薦め。

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