旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。

彼女の指定席がある乗物に他の娘を乗せるには
著:萬屋直人 画:方密 電撃文庫*1

名前を失うことに始まる喪失病が蔓延して穏やかに滅びつつある世界、少年と少女は二人、カブに乗って世界の果てを目指す――個人的な記憶が消えていく旅の記録ストーリー。
名前が消えてしまうために、相手を「少年」あるいは「少女」と呼ぶ。自己紹介したり会話をするときに、固有名ではなく普通名詞で呼び合うだけで、もの凄い非日常感が出てくるところに驚きました。
『世界が終わる場所へ君をつれていく』(葛西伸哉) *2を思いだす題名、『失なわれた町』(三崎亜記) *3と同趣向の設定なんですが、緩やかで緩やかな世界の雰囲気は、『終末のフール』(伊坂幸太郎) *4が一番近いかも。
目の前の餌に飛び付く健康的な欲望を持った少年と口より先に手が出ちゃう少女。嬉し恥かしの恋とか、生きるの死ぬのの恋とか、そういう過程を経ずに、連れ合いモードに入った二人の、次の行き先が楽しみです。

><