まごころを、君に THANATOS

題名の「、」に批評性を見出す江藤淳
著:汀こるもの 写:石渡俊晴(月刊アクアライフ) 講談社ノベルス*1

性格破綻の双子の金持ち美少年美樹と真樹は、魚マニア 柳瀬に対するいじめの仕返しに生物部を訪れるが、案の定、そこで爆発事件が――なんとなく、じゃすまないアクアリストの最凶ミステリ。
グッピーがメダカの仲間であることも知らなかった私には、美樹や柳瀬らが盛り上がるサカナ談議の奥深さを完全に理解はできないのですが、《そこに存在するわずかな差異が重要》という彼らの姿勢には、親近感を覚えます。
本来的にはそんなにサカナに興味がないのに、すっかり門前の小憎になっている真樹の姿に、『らき☆すた』(美水かがみ) *2のかがみを思い出したり。真樹もかがみも、その生き方にオタクの素養があるんですね。
犯人はキャストの2番目、的消去法で、目星はつくんですが、グッピーの生態やその繁殖に懸けるアクアリストの狂躁がちょっと無理目な爆破の動機を華麗に引き出す重要な鍵になっています。
ブラックジャック』(手塚治虫) *3が読者と患者をそっちのけで術式談議に耽っているかのような本作は、マニアを自認する自分が他人からどのように見られているか、を確認するのに最適かも。

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