ゼペットの娘たち

ピノキオは家を飛び出し、トルネードは家に籠もる
著:三木遊泳 画:宮田筝治 電撃文庫*1

意思を持つ金属 ゼペット鋼を材料に生きた人形を作る人形師サツキは、借金返済のため、お手製の犬型人形トルネード、完成したばかりの愛玩用人形ハリケーンとともに、都会に出て仕事を探すのだが――観用金属ほのぼのストーリー。
愛されるためだけに生まれた少女人形のためにオーナーたるべき人を探す、という設定からは、無垢な微笑みを見せるだけの植物系『観用少女』(川原由美子) *2 *3を思い出します。ところが本作の愛玩用機鋼人形では、ゼペット鋼が魂のブラックボックスになっていて、知恵もあるし成長もする。そんなところは、宝石系の『イリスの卵』(岡野史佳) *4 *5や、セクサロイド系の『アンドロイドジュディ』(若桜木虔) *6とかに近いかも。
精巧な機鋼人形を作ることに血道をあげるサツキなんですが、彼に作られたトルネードやハリケーンからも変態っぽく見えているあたりも含め、一人では日常生活がこなせない頑固職人的。お金に対する潔癖症や不器用さもあって、超好みです。
すれ違いや喧嘩や家出や行方不明は、恋を加速させるためのスパイス。とすると、恋や信頼が成立するためには、隕石から作られたロボットiDOLと操縦士の女の子の恋『アイドルマスター XENOGLOSSIA 〜絆〜』(涼風涼) *7と同様に、相手の行動の完全な制御や予測は、むしろ不可能でなければならない、ということなのかもしれません。

><