漂流厳流島

待ちかねたぞ武蔵、待ちかねられたぞ小次郎
著:高井忍 造形:松野光洋 ミステリ・フロンティア*1

赤穂浪士の討ち入りを細川家が熱烈に支持してから半世紀、江戸城殿中で細川家当主が何者かに斬り付けられ――細川家に降りかかる祟りの真相「亡霊忠臣蔵」を含む日本史ミステリ短篇集。
何でも撮る監督に小器用なシナリオライターの会話で武蔵と小次郎の厳流島決闘の真相を読み解く表題作を読んだとき*2には、『愛と青春のサンバイマン』(藤井青銅) *3を大人っぽくした雰囲気、と感じたんですが、今回の連作の展開もまさにそう。
近藤勇池田屋襲撃を急ぐ理由、荒木又右衛門の命を削った鍵屋ノ辻の仇討と、『邪馬台国はどこですか』(鯨統一郎) *4に比べると、謎の方向性がより一層マニアックに進んでいます。
庶民の視点から討入を論じる『忠臣蔵とは何か』(丸谷才一) *5とは異なり、江戸時代の判例から《法律的》に読み解く「亡霊忠臣蔵」では、当時の武家が認識していた「喧嘩両成敗」という言葉の意味と、今この言葉を聞いたときに感じる意味との乖離に驚き。お薦め。

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