漆黒泉

娘子軍と書いてからゆきさんと読む
著:森福都 画:小林万希子 文春文庫*1

長身コンプレックスを癒やしてくれた婚約者 王元澤の遺志を継ぎ、少女 晏芳娥は改革をとどめようとする権力者 司馬光の命を狙うが――王安石の改革から新法・旧法の党争に至る北宋を舞台にした片恋の中華活劇。
ヒロインが国王を目指す『十二国記シリーズ』(小野不由美) *2 *3や高級官僚になったヒロインの苦難を描く『彩雲国シリーズ』(雪乃紗衣) *4は、ある意味で上から・表からの改革を目指す中華ファンタジー
一方、本作では、芳娥は豪商の娘、元澤は先の宰相 安石の息子と、身分は一応上ではあるものの、新法を支持した皇帝が亡くなり、旧法派が勢いを盛り返した時代になっており、恋人を殺されたヒロインが暗殺技を身につけて敵方高官を狙う形で、下から・裏からの改革に当たります。
芳娥とともに都に向かう男 少游は、見た目は若い頃の元澤にそっくりでも、性格は呑気で女の尻に敷かれるタイプ、と、切れ者の元澤とは正反対。元澤が後援していた美人女優 月英と芳娥の意地の張合いと交感も見処の一つ。
元澤殺害の真犯人を解き明かすミステリー展開も嬉しい一冊、中華姑娘モノが好きな方にお薦め。

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