鼓笛隊の襲来

カレーの襲来に味噌汁で立ち向かってもカレー汁になるだけ
著:三崎亜記 画:まつあきのり 光文社*1

赤道上で発生した戦後最大の鼓笛隊は徐々に勢力を拡大し 明日には西日本に上陸の見込み――未曾有の天災に立ち向かう表題作を含む9篇の短篇集。
オーケストラの演奏で鼓笛隊の襲来を迎え撃つ日本政府の防衛策は、のびたが台風を育てる『ドラえもん』(藤子・F・不二雄) *2を彷彿とさせます。鼓笛隊の実体をテレビ中継すると視聴者に悪い影響が出る、ということで、熾烈な戦いの様子は描写されませんが、このあたりも「台風のフー子」な感じ。
5年前に行方不明になった電車と1年に1回だけすれ違える「同じ夜空を見上げて」は、『ある日、爆弾が落ちてきて』(古橋英之) *3に出てきそうな一篇。知恵の輪がいい味を出した、ボーイ・ミーツ・ガールじゃない大人の結末です。
すこし不思議なSF、という点では、安部公房と同じ方向性ですが、毒は少な目、少し哀し目なところが三崎亜記の持ち味かも。お薦め。

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