クロク、ヌレ!

ゴジラも大和も零戦ティラノサウルスも赤く塗れ!
著:真梨幸子 装:坂野公一 講談社*1

無名画家の伯父 彰夫の遺品を突然集め始めた母 久仁枝の姿に当惑する彰子だが、人気作家ジョー・コモリの死をきっかけに、彼らの交流を巡る広告業界の騒動に巻き込まれ――彼の人生を黒く塗ったのはミステリ。
父とその兄 彰夫の結び付きの異常な強さに反発する母、彰夫とジョー・コモリの間の確執が次第に明らかになっていく第1の線、広告業界内で互いを出し抜こうと画策する貴代美とミチルがとある企画を進めようとする第2の線、と、2つの線が絡み合っていく本作。
それにもかかわらず、展開が、縺れることなくすっきりと頭の中に入ってくるのは、登場人物の女性の立ち位置が、ある種の典型例だからのような気がします。
ジョー・コモリの死因、彰夫の死因、父の死因、母の狂気の原因と、解くべき謎が多数提示される中、わずか十数頁ですべてが集中して解決するスピードが心地良い。共同出版ビジネスとコミケ・同人誌との対比が自然に折り込まれて、これもまた良いアクセントになっています。
広告代理店が仕掛ける無理矢理盛り上げプロデュースに興味のある方にお薦め。

><