リセット

子供ふたりが大学に行かないと浮く教育費の重さ
著:垣谷美雨 装:片岡忠彦 双葉社*1

主婦生活に倦む知子、キャリアウーマンに倦む薫、水商売生活に倦む晴美は、偶然立ち寄ったレストランから、30年前の高校同級生時代にタイムスリップするが――アラフォーの人生やり直し物語。
All You Need Is Kill』(桜坂洋) *2や『リプレイ』(グリムウッド) *3は、何回も繰り返す時間ループものですが、タイムスリップものの本作の趣向は、平行宇宙の自分と人生を交換する『パラレル同窓会』(藤子・F・不二雄) *4に近いかも。
稀有な経験をともにすることになった三人のヒロインは、元の人生でもやり直しの人生でも、うまくいっていない生活についての不満を明かさずに、ついつい見栄を張ってしまうあたりに、哀しい人の性を感じます。
四十台のオバサンから女子高生に戻ってみて初めてわかる母親の姿が三者三様で、綺麗事だけでは済まさず、女の目から女を鋭く刺す視線の厳しさは、父と息子がタイムスリップで互いに理解し合う『流星ワゴン』(重松清) *5の甘さとは対照的。
今は自炊しているけど、子供の頃に弁当箱を洗った経験がない、という方にお薦め。

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