My name is TAKETOO

なぜなら、それが源さんなのだから。
著:ヒキタクニオ 装:タナカノリユキアクティビティ 文藝春秋*1

西暦2060年、改造をも辞さぬダンサーが限界に挑む競技会《ペルフェクション》の5年連続優勝者 武任に迫る老化と罠の影――精神と肉体を苛め抜く近未来ダンスサスペンス。
ドーピングが問題になる昨今の競技スポーツに対して、本作では、ドーピングそのものが評価の対象となっており、プレイヤーに処方された薬物の種類と量が減点ポイントとして成績に加算される設定になっています。その名も「ドーピング・インプレッション」。薬物使用は即失格とするよりも、一定の使用は認めつつ劇薬を使えば減点を大きくする、という手法は、確かにアリだな、と思います。
ダンサーの踵の骨にボルトを埋め込んでエッジを繋ぎ、チタン板の上で踊る、という設定も強烈。レギュレーション完全撤廃のオリンピックを描いた「ゼウスガーデンの秋」/『ゼウスガーデン衰亡史』(小林恭二) *2と同じ方向の酷さで、どんなことでも行き着くところまで行ってしまう人間の哀しさ。
それでも、武任をはじめとするダンサー達の演技の描写は大迫力で、しなやかに躍動する筋肉の美しさが伝わってきます。肉体と精神の限界に挑むクライマックス『銀のロマンティック…わはは』(川原泉) *3や、ダンスの頂点を極めた者に迫る罠『ニジンスキーの手』(赤江瀑) *4が好きな方も是非どうぞ。お薦め。

><