あたしと魔女の扉

どこでもドアに鍵穴はついているか
著:ジャスティーン・ラーバレスティア 訳:大谷真弓 画:結布 ハヤカワ文庫FT*1

サラフィナが病院に入院することになり、避けていた祖母ミアに引き取られたリーズンは、自分を魔女だと信じるミアの《邪悪さ》に反発し――シドニーとNYを股に懸けるクロコダイル・ウィッチ物語。
魔法を巡る祖母と孫娘の物語、ということで、『西の魔女が死んだ』(梨木香歩) *2っぽい話かな、と予想して読み始めたんですが、冒頭から、リーズンはミアを悪い奴だと信じ込んでいて、すぐに逃げだそうとする、といった具合で、その聞く耳持たない度は格別です。
数字にやたらと強いリーズンは、フィボナッチ数が大好きな数学感性少女。彼女の一人称で綴られる描写には、地の文も台詞も、数字の頻度がかなり高いような気がします。その数へのこだわりは、サヴァン症候群共感覚者の半生記『ぼくには数字が風景に見える』(D・タメット) *3にも似ています。
太平洋を跨いで活躍するため、オーストラリア語とアメリカ語の差異で言い合いになるあたりの蒼さが嬉しい。「たぬきうどんに入っているのは天かすか油あげか」問題と同様の異文化経験なんですね。
次巻では、魔法能力ではなく、数学能力を、『レインマン*4のカジノシーンばりに発揮してくれることに期待。

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