パララバ ― Parallel Lovers ―

葬式は遺された人の心を癒やすための儀式
著:静月遠火 画:越島はぐ 電撃文庫*1

事故死した一哉の通夜の晩、綾にかかってきた電話の主は一哉だった。死んだ綾からの着信履歴を見て電話した、という一哉の言葉に――私たちを殺したのは誰?のパラレルサスペンス、第15回電撃小説大賞金賞受賞作。
電話友達の間から一歩抜け出すことができない綾と一哉の二人の仲が、一方の死によって急変するかと思いきや、電話で話すことができる状況になると、また同じ仲に戻ってしまうところに、妙に納得させられます。
たとえば、『ほしのこえ』(新海誠) *2では、時間の経過に差を持たせることで別離を予感させて切なさを演出するんですが、本作は方向性がまったく逆。二人の距離は以前と変わりません。
むしろ、別れの予感を消し去り、あざとい切なさストーリーをあえて避けたことが本作のキモ。喧嘩して電話がかかってこない、とか、突然電話が通じなくなる、とか、普通の日常でもありそうなイベントなのに、会話が断絶して始めて気付くこの状況、その衝撃度が強いのはこの構成のおかげ。
突然の別れに後悔したにもかかわらず、また同じことを繰り返してしまう愚かさを味わいたい方に是非。お薦め。

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