よくわかる現代魔法 6 Firefox!

そいつが触れることは金を意味するッ! それがミダスだッ!

米国発のケータイから孵化したデーモンに懐かれ、「プー」と名付けて可愛いがるこよみだが、プーには金融バブルとその崩壊をもたらした前歴があるらしく――いつも使い魔と一緒、現代魔法使いライフの第6弾。
昨年春に出た『よくわかる現代魔法 1 new edition』*2では夏発行と予告された本作、今はまだ夏!*3 使い魔プーの設定は、2008年9月以降の米国サブプライムローン問題を鋭く予見(?)したものでしょうか。
猫バカの竹本泉が描く『てきぱきワーキン♥ラブ』*4には、ヒロイン ヒカルが猫のじーく菜に対して、ひたすら「じーく菜は可愛い」「じーく菜は可愛いわ」と連発するだけの一篇があるのですが、本作の作者も同じ傾向の持ち主のようで、本篇ではひたすらにプー(狐はネコ目)の可愛さが強調され、あとがきにオチ。
こうすると喜ぶ、を繰り返して親密度を増していくこよみとプーの関係を見ていると、《現代魔法》がCPUを流れる弱電流を利用するだけに、ユニットテストという開発手法を思い出しました。
ユニットテストでは、ある入力に対して望ましい出力が出たときの達成感をゲーム的な嬉しさに結び付けて、楽しくプログラミングができるようにするのですが、ユニットテストには、すべての入力を試すことはできないので、プログラムそのものの《意図》は読み取れない、という不完全性があります。プーは確かに可愛くて、こよみに懐いているようだけど、それだけでは済まされない、ユニットテストに通じるそんな危うさが、きちんと伏線になっています。
こよみは、どんなコードでもたらい召喚コードに変換してしまう変換コードの使い手で、セルフホスティングコンパイラのような能力の持ち主。こういう自己言及的能力を使った本作の解決は、ブートストラッピングに対応するのかも。そんな意味でも深読みできる爽快な結末は、この期間待っただけの甲斐がありました。
待望のシリーズ再起動、絶対のお薦め!

恒例

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