東京島

三十二中年漂流記
著:桐野夏生 写:三好和義 新潮社*1

クルーザー世界一周に失敗した四十代夫婦、きつい仕事から逃げ出したフリーター男23人。次々漂着する者はいても、帰ることはできないこの島を、彼らは「トウキョウ」と呼ぶようになり――女一人の極限状態は天国か監獄か南の島。
子供といえども英人と仏人の間には緊張と対立がある『十五少年漂流記』(ヴェルヌ) *2に対して、本作では、勤勉で生産的な中国人、怠惰で文化的な日本人という描き方。昭和は遠くなりにけり。
同じ無人島漂着モノでも、『十五〜』は明るい冒険、『蝿の王』(ゴールディング) *3は凄惨な秩序と、それぞれ特色があるのですが、本作の特色は、怠惰な貧乏臭さ、でしょうか。日本の現在の社会を誇張した貧乏臭さ。環境があまりに美しい『ザ・ビーチ』(デカプリオ) *4に比べて、ぷんと腐敗臭が漂う感じが、貧乏臭さを増大させています。
『十五〜』の少年達が全員帰還したのは、女の子がいなかったからかも知れない、なんてことを強く感じたラストでした。

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