“文学少女”見習いの、の初戀。

初天神に散る露は、菅原道真の悔し涙

文芸部部長 心葉に一目惚れした新入生 菜乃は、本好きと偽って入部するのだが、すぐに見破られてしまい――本読みの高校デビューは可能か心中ミステリー。
子供の頃に『デミアン』(ヘッセ) *2と『オーメン*3のダミアンに因縁を感じていた私としては、菜乃に共感しないわけにはいきません。その『デミアン』、中高時代に何とか読了した記憶だけが残る一方で、今回の本作のモチーフ『曾根崎心中』(近松門左衛門) *4は、途中で挫折した苦い思い出があります。
今までに本はあまり読んだことがない、という設定の菜乃なんですが、その割には『曽根崎〜』がかなり読み込めているようで、何だかちょっと差をつけられた気分。たとえば『円紫師匠シリーズ』(北村薫) *5のヒロインに負けるのは当たり前に思えるんですが、自分より本読みじゃない相手に負けるのは、ちょっと悔やしい。
近松に馴染めなかった理由は、心中に対して、やるせなさ美しさよりも、『ゼウスガーデン衰亡史』(小林恭二) *6的な滑稽さ、『宇田川心中』(小林恭二) *7的な軽さを感じ取ってしまうちょっとひねくれた私の性格のせいかも、なんてことを思いました。

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