これから自首します

いま、自首にゆきます
著:蒼井上鷹 画:三浦太郎 祥伝社ノン・ノベル*1

殺人で自首する決意を翻した友人をカッとなって殺してしまい、自首したいと勝馬に告白する小鹿だが、小鹿に自首されては困る事情が勝馬にはあって――自首と自白の微妙な違いミステリー。
1時間モノのTVドラマ的な自首小ネタの挿話が、本筋ときちんと絡んでいる構成。日常ミステリの連作短篇集の最終話の量をぐぐっと増やして、その前の話をコンパクトに埋め込んだような感じ。
台詞回しが舞台的なんですが、勝馬のモノローグでストーリーが展開する構成なので、このまま演劇化すると説明台詞の嵐になってしまいます。そういう意味では、小説に適した題材と言えそうです。
伏線がぴったりかっちり噛み合った真相に、ちょっと『フィッシュストーリー』(伊坂幸太郎) *2を思い出しました。無駄をどんどん削ぎ落としていくと、世間の狭さが強調されて、すべてが偶然のなせる技に見えてくる、そんな悲喜劇性も舞台っぽい印象を与える理由なのかも。

><