紫色のクオリア

返信しない心のクオリア

毬井ゆかりの紫色の目には、誰も彼もがロボットに見える。《汎用性の高いスーパー系》のあたしは、彼女の特殊能力を狙う魔の手に――思考実験ガジェット盛沢山の少し不思議ストーリー。
事故のせいで人とロボットが逆に見えるようになり、《人に見えるロボット》に恋をしてしまう『火の鳥 復活編』(手塚治虫) *2を思わせる設定の本作ですが、見た目がロボットじゃ嫌の『火の鳥〜』と、見た目がロボットでも別にいいじゃないの本作の間に、三十数年の年月の流れを感じます。
私もそうなんですが、プログラマーには、「自分は生体コンピュータ、夢は脳のガーベージコレクション」っていう感じを持っている人は結構いると思うんです。そういう感覚からすると、哲学的ゾンビの問題って、何だかちょっとナンセンス。題名の「クオリア」という言葉で茂木健一郎が頭に浮かんでしまい*3、何とも微妙な気分になってしまったのですが、読み始めたら一気に最後まで、でした。
百合風味をベースに、『All You Need Is Kill』(桜坂洋) *4と『あなたの人生の物語』(テッド・チャン) *5をぎゅぎゅっと圧縮して、友情パワー炸裂のハッピーエンドにした印象。お勧め。

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