月光亭事件

ウナ電が廃止されて三十年

名探偵石神の後を継いだ野上の元に猫のジャンヌを連れてやってきた狩野俊介(12)は、探偵になりたいと野上に告げ――繊細な心の少年探偵シリーズ第1弾。
生い立ちの不幸ゆえに推理能力という異能を発達させてしまった俊介ですが、その異能がかえって他人からの反発を招く、というところに気付いていないところが、まだまだ12歳、という感じで、彼が中途半端な推理を披露しなくなる理由には、確かに納得。
約二十年前の作品だけあって、俊介はまっすぐな良い子で、何とも懐しい。『神様のメモ帳』(杉井光) *2のように語り手と探偵が同世代だと、ここまで探偵を良い子にしちゃうと気恥ずかしくなっちゃいますが、語り手を約四十歳の大人にしたことで、微笑ましさが先に立つようになっています。
電話が嫌いな石神は、果たして現代、電報を使うのか、それとも電子メールを使うのか。こんなところにも時代を感じる一冊でした。

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