フィルム

店に有名人の色紙が貼ってあると微妙な気分
著:小山薫堂 画:木内達朗 講談社文庫*1

8年間結婚するでもなく交際していた乃梨子に、自分の誕生日の日に電話で別れを告げられた堀井(41)は、行く宛もなく乗車したバスでビデオカメラを持った老婆に出会い――セレンディップの奇跡」ほか全9篇、『カノッサの屈辱』の企画者の手による第1短篇小説集。
テレビ畑出身者の手による小説には、ブランド品やレストランの固有名詞を小道具で登場させることで、その登場人物の性格を演出する傾向がある、という仮説を持っているのですが、本作はまさにそれ。いかにもな商標名が登場するのですが、『シンプル族の反乱』(三浦展) *2な今となっては、そのバブリーな雰囲気が時代遅れ感を醸し出すところが面白い。
セレンディップ〜」は、いわば『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川流) *3ハルヒ視点でキョンエンド、最後に古泉の余計な一言みたいな話。果たしてそういう状況で怒らずにいられるのか。ハルヒだったら激怒すると思うんだけど、本作の通り、やっぱり男は弱いものだ、と感じました。
ヒューストンの酒場「アウトポスト・タヴァーン」は実在するんですね*4。現実に存在するアイテムを何の躊躇いもなく使うところが、テレビ的な印象の一冊でした。

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