騎士は恋情の血を流す

しずるさんは姫、よーちゃんは騎士

人の血の流れを読み取り、これを制御する能力を持つ貴士は、じゃんけんで負けないことを売りにした芸能人 ほのかの子供時代からの友人で――騎士道精神の欺瞞サスペンス。
名探偵御手洗潔の最初の事件『異邦の騎士』(島田荘司) *2に合わせたのか、しずるさんとよーちゃんの最初の事件に当たる本作もまた、「騎士」がテーマなんですが、誰が騎士なのか、が決定的に違います。
本作の〈騎士〉は、安楽椅子探偵 しずるさんに謎解きをされる側の貴士。彼は、『ブギーポップは笑わない』(上遠野浩平) *3でお馴染みの統和機構、その末端組織〈オカリナ〉に所属する異能者 花車と暗闘を繰り広げるのですが、異能の強さは花車<貴士で、統和機構側が一般人よりも弱くなっています。この二人を超えた場所に位置するのがしずるさん。織機綺<スプーキーEとブギーポップ、な感じのキャラ配置で、しずるさんの登場も突然。
帯には『しずるさんシリーズ』(上遠野浩平) *4 *5 *6が、「文庫」とだけ紹介されていて、富士見ミステリー文庫は本当に終わったんだな、と感慨を受けました。本書には掲載されていませんでしたが、「はりねずみチクタの冒険」は果たして完結するのか、短篇連作形式の新作に期待。

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