幻竜苑事件

大家族は家父長のハーレム?

突然現れた少女 美樹に両親を殺した犯人を捕えるよう依頼された野上は、彼女の無礼な態度に冷たく断りを入れるが、探偵志願の少年 俊介とともに彼女の周囲を探ることになり――男やもめは家族が欲しいミステリ。
裁判官が被告に説教をする報道を耳にしたときに、果たしてその説教が被告の心に通じるのか、何ともいえないもにょり感を感じることがあります。
一方の本作、火曜サスペンス劇場で言えば断崖の絶壁の告白シーンに相当するクライマックスでは、謎を解き明かした俊介が犯人に説教することになります。裁判官の場合と違って、犯人がそれを受け入れる様子にすとんと腑に落ちるところがあるのは、彼の身の上の不幸のせいか、それとも素直な性格のせいか。
そんな良い子 俊介の保護者を自認する野上は、といえば、美樹やアキの会話でも、いい年をした大人がこれはどうか、という態度をとる始末。
前巻*2でも、性格に難有りの野上が俊介やアキにモテることが最大の謎だな、と感じてはいたのですが、考え直してみると、野上の大人気のなさは、どんな相手とも対等に、相手の目線に合わせて振舞っていることになるのかも。
気配りのできる俊介、気は強いけど実は――なアキ、彼らに慕われる野上、《家族を作りたい》本シリーズの構図は、家長 野上を囲むハーレムものと見ることもできそうです。

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