未成年儀式

寮という《船》を出る儀式

夏休みの女子寮で地震に襲われた少女達。外部との連絡が断たれ、土砂崩れの兆が見える中、寮外で人を殺した教師が目撃者を求めて――彼女が殺したい少女は誰か青春ミステリー、第7回富士見ヤングミステリー大賞準入選作。
各章の間の挿話として【彼女】の殺意や決意が語られる構成の本作。どの娘が抱える問題も、感情を吐露してしまえば解決できそうなものなのに、内に籠って勝手に妄想を広げちゃうところが主題。【彼女】当ての謎解きというよりも、誰もが【彼女】に該当しうることを狙ったものかも、という感じがします。
勝気なくせに人見知りなヒロイン マイアが登場する『成長の儀式』(アレクセイ・パンシン) *2では、彼女の《泥喰らい》に対する蔑視が経験を積むことで変化していきますが、本作のヒロインは皆、他人に対して全部偏見を抱いていて、そのせいで本音が出せないという状況。限られた時間で、どれだけ先入観を解消できるのか。
今はなき富士見ミステリー文庫よりは、コバルト文庫向きかも。心理の読み過ぎなのか、それとも妄想なのか、『リリカル・ミステリー』シリーズ(友桐夏) *3が好きな方にお薦め。

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