観 -KAN-

女のすなる男舞、白拍子は宝塚の根源
著:永田ガラ 画:鳥羽和博 メディアワークス文庫*1

父の後を継いだ兄の一座を離れ、フリーで舞台に出る三郎は、将軍の前で舞うという野望をかなえるため、自分の一座を建てようとするが――美貌と才気の観阿弥、十七歳。
若き観阿弥が抱く野望は、帝ではなく将軍の前で舞うこと。観阿弥世阿弥南朝のスパイ説*2とは、大分趣きが違います。
基本的な展開は、才気ある若者が業界の因習や悪賢い大人の思惑に振り回されつつも今の時代を切り取って大衆に支持される、と、まさに古典芸能的。同じく能楽をテーマにした『渕となりぬ』(木原敏江) *3 *4 *5や、ゲリラ的手法を多用する『愛の歌になりたい』(麻原いつみ) *6 *7を思い出しました。
同じ舞の天才でも、人を斬る罪におののく武家の心を鎮める演出に気付いた三郎と、才能が観客に伝わらなくて苦悩する『ニジンスキー寓話』(有吉京子) *8 *9のルシファの差は、まさに、顧客のニーズ*10を見すえたところにあるのかも。お薦め。

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