ポストガール3

yomimaru2004-08-27

プログラムのバグから心が茅生えた人型自律機械(メルクリウス)の少女シルキーが、郵便配達兼代書屋をやりながら出会う人々や他の機械といった「客」との交流を描いた第三段。ときどきシルキーが銃をぶっ放すような険呑な事態に巻き込まれるのですが、といっても銀河郵便シリーズ(大原まり子)*2のような派手さはなく、てくてくとぼく(枯野瑛)*3よりもずっと自律機械が人間に受け入れられていて、情が必要な場面でも必要とされており、ヨコハマ買い出し紀行(芦奈野ひとし)*4と世界の穏やかさが似ています。
もっとも、ヨコハマ〜は、すでに人類は悟っていて、ある種いい人ばかり出てくるような感じですが、本作ではまだまだアクティブで、生々しい人類の姿が描かれています。
バグによって心が茅生えなくとも、人間はメルクリウスの中に心を見出してしまう。シルキーはシルキーで、この「心の動き」がプログラムによるものかバグによるものかわからない。この辺りの葛藤がうまく各話に挿入されており、基調が明るいのが良いですね。
この最終話までには、抱き人形(イシュタル)が「客」となるような話が出るといいのですが。話の中に何回かちょっと出てきている薬夾を宝物にしていたイシュタルのエピソードが気になっています。
短篇集シリーズですが、この巻の中ではシリウスが好きですね。地廻りの子供向け芝居興行を続けている傷痍軍人の戦隊ショーのような興行でのエピソード。