ソウルドロップの幽体研究

yomimaru2004-09-07

ある人にとって生命と同等の価値のあるものを盗めば、その人は死んだも同じ。だからその人は死ぬ。本作の世界の前提となるこの言葉遊び的な設定が、何となくブギーポップシリーズ*2の怪人の設定を思い起こさせます。
金持ちのお嬢奈緒瀬、視力の大部分を奪われた元警官伊佐と良心回路を持つロボット調査員千条が、怪盗ペーパーカットに挑むというストーリーだてですが、今巻はシリーズの登場人物・舞台設定紹介といった感じ。
出版社のつけたジャンルは長編新伝奇小説。やはりこれも流血しているのにあまり血の匂いのしない、妙に清潔な感じのする作者らしい文章です。
新伝綺といえばファウストになるかと思いますが、たとえば佐藤友哉の生の穢さの表現は苦手、西尾維新の流血の絶対量も嫌、という人でも、本作品なら大丈夫。上遠野浩平新伝綺より一つ前の世代ということなのかもしれません。