人形はライブハウスで推理する

yomimaru2004-09-12

著:我孫子武丸 画:伊藤正道 講談社文庫*1

腹話術師朝永の第二人格は人形鞠夫を通じて現れ、難事件を解決。それを支えるヒロイン睦月。人形探偵シリーズ第三段の文庫化です。新書版時代にはこの巻の前まで読みましたがその後しばらく空白、その後河内実加のコミックス化*2 *3でまた思い出して、知らぬ間にノベル新刊が出ていたらしく、その文庫化。読んでもいないのに懐かしい感じ。
朝永が睦月との付合いを重ねるうちに鞠夫との共存を受け入れ、次第にそれを誇りに思っていく、というのが基本ストーリーなのですが、二人がいいムードになると毎回誰かが邪魔に入るコメディタッチの展開で、無闇やたらに泣かせようとしない点が気に入っています。多重人格者に対して人格の統合を促さず、共存を図ろうとするのはある意味画期的だと思うのです。人格の統合は、ある人格の「死」につながるのですから。
そういう許容度の高さゆえに、睦月は他の男にも惚れられたりして、朝永との仲が微妙になったり。不器用な大人の恋は、未成熟な子供の恋と同様気恥ずかしいものですね。
まあ、多重人格のそれぞれをそのまま受け入れてハッピーエンドというのは、ある種のハーレムエンドなので、私好みであることは間違いありません。
いつもの殺人事件ではなく、過去の友人との喧嘩の原因を解く夏の記憶が好きですね。