待つ宵草がほころぶと

yomimaru2004-09-13

良い子であることに倦んでいる中学三年生の凛。小さい頃にそれを見抜いた初恋の人白尾が、今度は教師となって帰ってきた。凛はまた彼の元を訪れるようになるが――
勿忘草の咲く頃に*2もそうですが、設定や筋立ては古典的でありふれているにもかかわらず、この作者の作品には何か目新しさがあります。谷川史子デビュー時にも感じたような新鮮さ。
ストーリー展開に独特の寸止め感があります。普通ならもう少し先まで書いてしまいそうなところを、その直前で止めている。一方で、風景や人物外観の描写がかなり詳細。「ありきたり」から脱することができ、新鮮な印象を与える理由の一つはこの辺りにあるのかもしれません。
古典的な少女小説というと、紅雀(吉屋信子)*3とか(古すぎ)、川端康成川上宗薫や富島健夫や若桜木虔が書いていたころのコバルトとかが思い出されますが、もちろんそれとは一線を画していると思います。お勧め。