プリズム

yomimaru2005-04-26

bk1

自宅で死体になって発見された小学校の女性教師。凶器のアンティーク時計、ガラス切りで切られた窓、睡眠薬入りチョコレート。登場人物それぞれが持つ証拠や思惑から導き出される意外な犯人像の数々――本格ミステリの極限作。
藪の中(芥川龍之介)*2形式の本作、読んでいると何故か、ギャルゲーやエロゲーでメインヒロインを攻略した後、ヒロインの親友のストーリーで「あの娘(=ヒロイン)は嘘つきだから……」と言われたときのようなドッキリ感があります。
あるキャラクターのストーリーで別のキャラクターの裏側が描かれ、それが円環構造をなしている形式は、ノベルゲーム形式との対比で実に興味深いものがあります。私にとってのミステリーの楽しさは、推理の無謬性よりも、秘密の暴露の過程にある、ということを強く感じさせられました。
平行線は交わらない平面幾何学世界から、突然任意の二直線が必ず二点で交わる球面幾何学世界に移行し、その後に、ある点を通ってある直線に平行な直線が複数存在しうる双曲面幾何学世界にまた移動したかのような酩酊感を味わいたい方、お薦め。