少女には向かない職業

yomimaru2005-09-27

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ド田舎でも都会でもない島、働きに出ずに酒を呑む父、不幸を娘に嘆く母、少年との仲を嫉妬する友人、息が詰まる圧迫感の中、私 葵の運命は、美少女 静香との語らいで、大きく変わっていった――ふたりの少女の慟哭の記録。
閉鎖されたディスユートピアの中、我慢の末に膨らんでちょっとした刺激で破裂しそうな水風船のように不安定な心を抱いた少女の描写が凄まじい怪作です。
さっさと口に出してしまえばいいのに、なんでそこで黙ってしまうんだ――齢を重ねた大人の視点から見ると、そうとしか言いようがないこの年頃の「大人って汚ないよ」*2の感覚が、ひしひしと伝わってきます。
犯人も被害者も殺人事件が起きることもわかっていて、理由と手段の両方の「なんで?」に注目させるミステリー。読んでいて、やはり恋の罪(田中雅美) *3を思い出すのは、本作もまた悲劇的な「(ディス)ユートピアからの卒業」の物語だからかもしれません。お薦め。

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