青春時計

yomimaru2005-11-13

bk1

駿介との違いを意識しつつある聖司は、火事で止まった時計塔を見つめる少女 慧に出会う。春休みが終わったら海外に留学する彼女を前に、高校生のままの彼らは――青春ラブストーリー。
登場人物三人の視点を作者三人がそれぞれ担当していて、同じ事件に対する各人の心の奥底に秘められた思いが次第に明らかになっていく構成。作者の語り口の違いもあって、それぞれのキャラクターへの自然な感情移入が惹起されます。
形式は藪の中(芥川龍之介) *2に似ていますが、事件の真相は共通。裏側の心の深層が明らかになっていく様子は、僕と、僕らの夏*3の裏シナリオを、主要登場人物に完全配置した感じ。
ブコメでも恋愛モノでもなく、気恥ずかしい「青春」だからこそ三人の共同作業で作り上げることに意味がある、文化祭で初公開された自作青春映画のような印象の、大満足の一作でした。