彼女には謎めいたところがある

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10月はSPAMで満ちている(桜坂洋)/七つの黒い夢*1の感想をウェブで収集しているんですが、桜坂初体験の方にも好評のようです。
感想を読んでいて気付いたんですが、桜坂初体験の人にとっての本当の謎は、第一文なんですね。
解決すべき謎に見える「猫に魚肉ソーセージを与えているのは誰か」はミスリードで、明かされるべき謎は別のところにあり、しかも最初の文で提示されている。
初読の人にとっての本作は「誰が犯人か」「いつ/どうやったのか」ではなくて、「そもそも《解くべきこと》は何だったのか」というメタ的な主題を突き付ける作品なんだと思います。
一方で、よくわかる現代魔法(桜坂洋) *2を知っている私にとっては、作者と探偵が同名の小説を読んでいるような楽しさもあります。

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法月綸太郎の冒険(法月綸太郎)*3 *4で穂波にあしらわれる綸太郎を見て、現実もそうなのかな? と想像する面白さ。残念なことに私は、生身の法月綸太郎を知っているわけじゃないので、小説に描かれる法月像とのギャップを、真の意味で楽しむことはできません。
でも、嘉穂という《人物》は よく知っています。女子高生の嘉穂と二十代半ばの嘉穂、ふたつの嘉穂の一致やギャップに一喜一憂する楽しさは、現代魔法読者ならではのもの。
思い返してみれば、よくわかる現代魔法ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ*5でも 秘めたテーマは第一文に込められていました。
読者や《ぼく》の心が、嘉穂のちょっとした仕草や言葉に揺り動かされるのは、謎めいた彼女と、読者に合わせた本作の二面性にあるのかもしれません。
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10月はSPAMで満ちている感想リンク集

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