ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 恋のドレスは開幕のベルを鳴らして

yomimaru2006-04-05

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見た目だけが売りの女優マーガレットが再起をかける舞台衣裳の依頼を受けたクリスだが、心の闇を引き出す「闇のドレス」の気配がまたしても――職業婦人のヴィクトリア朝ロマン。
貴族と自立女性が並び立つこの不思議な雰囲気は、華族とモガが一緒に街を練り歩く平井骸惚シリーズ(田代裕彦) *2大正デモクラシーに通じる気分。今回の顧客マーガレットも、貴族でありながら実家の反対を押し切って女優になろうとしていて、身分制度が崩壊しつつある時代には、文化の不思議な渾淆があるような気がします。
とすると貴族を憎む「闇のドレス」の一味がやっていることは、義賊ねずみ小憎みたいなもので、実は時代遅れなのかも。
劇中劇展開は大いに好みで、舞台と戦いのクライマックスがうまく重なって、満足の一冊でした。気っ風の良い姐御パメラが活躍する話も読んでみたい。

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