名探偵はもういない

yomimaru2006-04-13

bk1

義弟の敬二とドライブに出掛けた木岬研吾。雪崩で足止めを食った彼がペンションで出会った事件に、犯罪研究者としての自覚は次第に変貌して――すべての出来事は論理的な帰結を導くための伏線に過ぎない、ただひたすらに推理、推理の、読者への挑戦状型ミステリ。
この手のミステリを読んでいるときの感覚って、食材や手順がこと細かに指定され、ちょっとした誤差も許さないような料理と共通するものがあります。ただしそこは「こだわり」なので、道具なのか食材なのか判然としないモノも並んでいる、でも全部使え、って感じ。
男子厨房学入門(玉村豊男) *2のような、決まった材料から種々の料理を作ってみよう、出来上がったものが違っても、それなりに食べられるものができればいいじゃないか、という大らかさとは対極に位置する、唯一無二の究極解を目指す求道的な厳格さ。
dancyu 2006年1月号掲載の「狐野扶実子の“魔法の手”[豚肉]を焼く」*3を読んで、美味しいものを作るための料理のはずなのに、何故か禁欲的な気分になったときのことを思い出しました。
もちろん《焼き上がった肉》は、大変美味しゅうございました。

><