九杯目には早すぎる

yomimaru2006-05-07

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著:蒼井上鷹 画:浅羽容子 双葉社*1

手際の悪い探偵志願、手近なところで浮気、作家志願者につきまとうネット知人――第26回小説推理新人賞受賞作「キリング・タイム」ほかを含むどうにも皮肉なミステリー短篇集。
登場人物が誰も彼もセコくて、少しだけ嫌なところがあって、やることなすことうまくいっているようで実は駄目で、と、春期限定いちごタルト事件(米澤穂信) *2の小鳩くんが目指す小市民像とは大きく違う、「小市民」がひしひしと実感させられます。
題名と表紙から掌の中の小鳥(加納朋子) *3とかBAR レモン・ハート(古谷三敏)*4 *5とかの小洒落た雰囲気やじんとくる人情噺を予想していたんですが、どの話も一昔前の中流貧乏臭さと悪意としっぺい返しが基調になっていて、読了後に陰鬱な気分に。
ずぶずぶと沼地に沈んでいきたいような気分をさらに深めたいときに最適な一冊です。

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