安徳天皇漂海記

yomimaru2006-05-09

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壇ノ浦で入水した幼き安徳天皇。彼とともに消えた神器と謎の男天竺丸が三代将軍実朝に迫る――日中二人の帝の運命を描く幻想歴史長篇
安徳天皇の鎮魂譚というと、妖怪ハンターシリーズの海竜祭の夜(諸星大二郎) *2が思い浮かびますが、あの海竜と草薙剣が見つからない理由、これを読んで初めて得心しました。
安徳天皇とともに入水する二位の尼の「浪のしたにも都のさぶらふぞ」の台詞は知っていましたが、このエピソードをしっかりと天孫降臨に重ね合わせた展開と、重大なシーンで登場する3つの神器には驚き。
後半では元に追いやられる南宋の幼帝との交感が詩的に描かれていて、彼らを諦念へと導く《原始》の姿は、妖星伝 鬼道の巻(半村良) *3に通じる衝撃があります。
とにかく前半実朝篇には圧倒されました。高丘親王航海記(澁澤龍彦) *4と一緒にどうぞ。

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