メビウス・レター

yomimaru2006-10-13

bk1

男子高校生の焼身自殺事件の真相を追求する不審な手紙が人妻ストーカー妙子に悩む作家 阿坂の元に届く。阿坂は秘書 芳江にも担当編集 野島にもそのことを隠すが――驚愕の結末、奇想のミステリー。
初期の島田荘司作品が理解されなかったように、ゲラ刷りまで出ていたにもかかわらず、本作も編集者の独断で出版中止の憂き目を見たという本作。
確かに内容の絡み度合、融合の度合は複雑で、なおかつトリッキーではあるんですが、そこまで人を選ぶ作品なのかな、という気もしなくもありません。それもこれも、種々の「変」なミステリーに慣れてしまったせいかもしれませんが。
手紙の文章は、ねらわれた学園(眉村卓) *2風の、妙にかしこまった感じの語り口で、最初は大人が無理して今風の若者の語りにしたら大昔の口調になっちゃった、という印象を受けたんですが、これが重要なファクターで驚き。
複数の殺人事件が並行して発生するんですが、クライマックスで一点に集中する展開も見事。お勧めです。