テヘランでロリータを読む

yomimaru2006-12-12

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著:アーザル・ナフィーシー 訳:市川恵里 白水社*1

改革に共感して留学先の米国からイランに帰国し英文学を教えていた私は、イスラーム革命に翻弄されて大学を追われ、秘密の読書会を開くことに――衝撃の題名にして衝撃の回想録。
社会から迫害される中での秘密の読書会という点では小説伝(小林恭二) *2のアルゴー読書会に通じるものがありますが、本作は回想録だけに、身に迫る監視社会の圧力がひしひしと伝わってきます。
ロリータ(ナボコフ) *3グレート・ギャツビー(フィッツジェラルド) *4ボヴァリー夫人(フローベール) *5といった、ある意味で《ありふれた》小説が対象書籍に取り上げられています。洋書入手の困難性、飜訳の不在と、出版大国の中からは想像もつかない現状には驚き。
小説をリアルに考えその影響を憂うがゆえに迫害する革命派と、それゆえに一層小説に心を投じ影響される知識人、それぞれがどのように読み解くのか、実に興味深い。
目先の勝敗にとらわれがちな《主人公》の性格が、本作の《ストーリー》を駆動する力となっていて、どちらかといえば暗い傾向の回想録のはずなのに、少し喧嘩っぱやいヒロインが活躍(?)するフィクション的な味わいもあります。お薦め。

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