夜は短し歩けよ乙女

yomimaru2006-12-14

bk1
著:森見登美彦 画:中村祐介 角川書店*1

クラブの後輩の天然美少女に片思いする内気で駄目な先輩の私。接触の機会を増やすため「偶然の出会い」を装う私は、酒飲みの彼女が引き寄せる不思議時空に取り込まれ――非モテ男子が決断できるか恋愛譚。
帯の大森望の褒め方、「彼女」の「姫」ぶりがいかにもサークルクラッシャー的なところ、「彼女」に対する「私」の思いが彼女いない歴=年齢男子の典型的妄想っぽい感じがあるところ。読んでいて何とも居心地が悪いというか、古傷が疼くというか、本作に出てくる片思いの男達の幸運をフィクションと切り捨てられるかどうかが現世での勝負の別れ目だというか。
その意味で、やり方の方向性は間違っているとは思うものの、学園祭の第三章「御都合主義者かく語りき」が良かったかも。ゲリラ演劇公演の仕方も、ここはグリーンウッド(那州雪絵) *2 *3におけるルパン三世カリオストロの城一幕モノにも似た工夫で、痛快。
呑み助の「彼女」の喋り方は、シュガーな俺(平山瑞穂) *4の女飲み友達とも似た時代がかった丁寧語。日本ファンタジーノベル大賞受賞者に共通する何かがそこにあるのかもしれません。
先輩パートではイライラムカムカしながら、彼女パートではゆらゆらと誘われるがままに楽しい思いをしながら、どうぞ。

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