少年検閲官

yomimaru2007-01-29

bk1

すべての書物が駆逐されて数十年、英国人クリスは、もっとも焚書が遅れた国 日本の片隅の町で、赤い十字架の印と首なし屍体の話を聞き――忘れられた《ミステリ》を探す少年たちの探偵譚。
空想を焚書にする華氏451度(ブラッドベリ) *2、芸術を焚書にするリベリオン*3と、マニアが好きなものが抑圧される未来社会というのはよく見かける設定。
ところが、本作では、犯罪と人の屍を扱う「ミステリ」が焚書にあっており、しかもそれが何年も続いてしまったために、誰もが犯罪のあり方を忘れてしまったことにしています。
これによって、ちょうど、科学捜査ができなかった頃の探偵小説と同じように、現代を舞台にしては描けないナイーヴなトリックや騙し、人の悪意?が素材として使えるようになっています。この作者の目の付け処は凄い。
クリス、ユーリ、エノと、出てくる少年たちは、トーマの心臓(萩尾望都) *4の登場人物的な微耽美で好み。日本のミステリマニアたちが残したガジェットが重要な役割を果たすこのシリーズ、続きが楽しみです。

><