独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明短編集

yomimaru2007-02-16

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著:平山夢明 画:Edardo Belinci 光文社*1

ユニバーサル横メルカトル図法の市外道路地図帖である私は、《誇張》と《遮蔽》によって先代の客待自動車運転手の《使命》を手伝っていたが――このミス2007年版*21位の表題作を含む、8篇の後味の悪い短篇集。
表題作は日本推理作家協会賞短編部門で受賞しているんですが、犯人当てではなく、悪漢モノ?でした。地図を見るときに人間が無意識に行っている情報処理は、実は地図側がやっているのだ、という逆転の発想が面白い。執事風の語り口が好きな人は是非。
管理社会の悪意というか根回しゲームの陰湿さというか、を醜く描く焚書モノの「オペラントの肖像」は、リベリオン*3華氏451度(ブラッドベリ) *4同様、検閲側の《心の揺れ》をテーマにした作品。焚書的状況に慣れきった人々が慣れきったままに淡々と生活している様子を描く少年検閲官(北山猛邦) *5や失われた町(三崎亜紀) *6とは大分違う雰囲気です。
ねっとりした暗い泥の中にずぶずぶと浸りたいときに最適の、良い意味で爽快さのかけらもない一冊。お薦め。

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