ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・すりー

yomimaru2007-02-17

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人気作家 今西の専属編集を任されている私は、メディア展開に乗り気でない先生を説得せよと上司にせっつかれるが、先生は行方不明で――「私と今西先生と本気のお仕事」を含む全四篇の十三階サーガ短篇集。
今西先生の話では、小説家Aさんと親交を結ぶには、Aさんが小説家であることを知らないうちにAさんと親しくなる必要がある、という論が展開されています。ファンとして小説家に近寄っていっても、小説家のトモダチにはなれない。
小説家Aさんのファンであるという関係は、後で発見されることが必要なんです。仲良しのAさんは実は小説家だった、ファンだったのに知らなかった、という関係。このシリーズの登場人物の関係もかなりそういう面があって、この巻では、XさんとYさんは実はこういう関係にあったのだ、が、次々と連鎖的・円環的に明かされる構造になっています。
これって、《サーガ》作品群の「因縁を知らないままに出会った二人」の王道展開なんですが、《サーガ》の登場人物としての地位を確立するために本人が自覚していない《因縁》が必要なのは同じ。
千夜子と健一の関係が進まないのも、二人の真の《因縁》がまだ認知されていないからなのかも知れません。

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